●『君主論』研究_第一五章





『人間が、とりわけ君主が、褒められたり貶されたりすることについて』
〔一五章からは君主にまつわる風評とか周りの評価といったものに関する話になる。その最初である第一五章では、悪評の扱い方について言及している〕

『すべての面において善い活動をしたいと願う人間は、たくさんの善からぬ者たちのあいだにあって破滅する』
『必要なのは、君主が善からぬ者にもなり得るわざを身につけ、必要に応じてそれを使ったり使わなかったりすることだ』

・褒められたり貶されたりする例
惜しみなく与える←→吝嗇ん坊(けちんぼう)(16)
気前がよい←→強欲
慈悲深い←→冷酷(17)
信義を守る←→信義を破る(18)
猛々しく豪胆←→女々しく意気地なし
丁重←→傲慢
好色←→潔癖
律儀←→狡猾
堅固←→軟弱
重厚←→軽薄
信心深い←→不信心者
etc
括弧内の数字は後に詳述される章

マキャベリはこれら善の性質のものばかりを身につけた人物がいれば、それは称賛極まりない人物であるとしながらも、現実的にはこれら美徳を身につけることも完全に守り抜くこともできないとしている。

・悪評に対する向き合い方
政権を失う怖れがあるほどの悪評⇒なんとかして逃れろ
政権を失うほどではない悪評⇒できるだけ逃れろ、無理ならさりげなく遣り過ごせ
政権を守るためには受けなければならない悪評⇒悪評を恐れずにやってしまえ(※1)

※1
美徳であるかに思われるものでも、その後についていくと、おのれの破滅へ至ることがあるのだから。また悪徳であるかに思われるものでも、その後についていくと、おのれの安全と繁栄とを生み出すことがあるのだから。


第一五章のまとめ

政権を失う怖れがあるほどの悪評⇒なんとかして逃れろ
政権を失うほどではない悪評⇒できるだけ逃れろ、無理ならさりげなく遣り過ごせ
政権を守るためには受けなければならない悪評⇒悪評を恐れずにやってしまえ


マキャベリの考える美徳、ならびに悪徳との付き合い方は、あくまで現実に根ざしたものであることが分かる。すなわち、善であらば良い結果が伴うと考える理想論ではなく、良い結果のために善も悪も行うのだとする考え方。
悪評に関しては、それは基本的に君主にとってプラスにはならないので、できるだけ避ける方向を推奨する。しかし、政権を守るために悪評を受ける(悪いことをする)必要があるなら、それは行うべきである。なぜなら、悪評を受けても、そのあくどい行為によって自分の政体が固まることもあるのだから。
悪評を避けるも、あえて受けるも、政体維持という目標からの逆算で考えるべき、との思想。

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