●『君主論』研究_第二五章





『運命は人事においてどれほどの力を持つのか、またどのようにしてこれに逆らうべきか』
〔第二五章では「運命の扱い方」について言及されている〕

・運命によって酷い目にあうのは、それのための予防策を取っていなかった箇所である。

第二四章で述べられている結論とほぼ同じであり、つまり平穏な時に何がしかの手を打っていれば逆境が襲ってきても大丈夫、耐え抜ける、ということ。ここまでは第二四章と同じだが、第二五章では運命に関するもう一つの見解が以下に示される。

・君主が性質や資質を何ら変えていないのに、滅びてしまうことがある

その理由
1、全面的に運命にもたれかかっていて、それが変転したから
2、今までは君主の行動様式が時代の特質に合っていたが、それが合わなくなったから

2に関して。これゆえに、全く同じ方法を取っても、時代によって成功したりしなかったりするし、全く対照的な方法を取っても、どちらでも成功するといったことがありえる。
なお、マキャベリは時代の変転に合わせて自分の行動様式を変化させられるほど思慮深い人間はいないという。なぜなら、一時代において成功した彼の態度に対し「時代が変わったから改めろ」と説得するのは難しいから。ここでは「良い例」が誰も挙げられておらず、逆に教皇ユリウス二世を「運が良かった例」として挙げているに過ぎない。

・運命を支配するには、慎重であるよりは果敢である方がまだ良い

ここの理由は明確に語られていない。おそらく過去の事例からマキャベリがそう判断したのだろう。


第二五章のまとめ

運命によって滅びるケース
1、全面的に運命にもたれかかっていて、それが変転したから
2、今までは君主の行動様式が時代の特質に合っていたが、それが合わなくなったから

運命の扱い方
1、基本は平穏な時に逆境に備えて用意しておく
2、時代の特質に合わせて自分の行動様式を変化させる(これはすごく難しい)
3、(マキャベリの主観的判断では)慎重であるよりは果敢である方が、運命を支配しやすい

第二五章では、第二四章の結論である「平時から準備しとけ」が繰り返され、また、時代に合わせて行動様式を変えろとの助言があるが、これはマキャベリも大変難しいとしており、そこまでをメディチに求めていたかどうかは疑問。それゆえに「慎重であるよりは果敢である方がまだ良い」と、ベターと思われる方向を主観的に示しているのかもしれない。

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